背景
スクラムでは「自律したチーム」が重要だと言われることが多いです。しかし実際の現場では、「どこまで自分たちで決めてよいのか」という点に迷うことも少なくありません。
自分たちで動くべきだという考えは理解できる一方で、任せすぎることへの不安や、組織としての統制とのバランスに悩む場面もあります。
前回の記事では、スクラムがうまく機能しない原因として「前提条件が満たされていない」ことに触れました。その中でも特に重要なのが、チームが自分たちで動けるだけの状態にあるかどうかです。
では、そのためにチームにはどこまでの権限が必要なのでしょうか。チームが自分たちで意思決定し、改善を進められる状態であることが重要です。 そしてその状態は、単に権限を持つことで実現するものではなく、周囲からの信頼とセットで成り立ちます。
考察
権限とは何を指すのか
ここで言う権限とは、単なる作業の割り振りではありません。チームが日々の開発を進める中で行う、次のような意思決定を含みます。
- 作業の進め方
- 技術的な選択
- プロセスの改善
これらを外で決める状態では、チームは与えられたタスクをこなすだけの存在になりやすい。逆に、自分たちで決められるようになると、状況に応じて柔軟に判断し、改善を繰り返すことができるようになります。
なぜ権限は自分たちに集まらないのか
多くの場合、チームが自律的に動けないのは、単純に権限がないからではありません。その背景には、「任せるには不安がある」という状態があります。
- 今、何が起きているのか分からない
- なぜその判断をしたのか分からない
- 任せた結果がどうなるのか見えない
このような状況では、ステークホルダーとしても判断を委ねることは難しい。つまり、権限の問題は「与えるかどうか」ではなく、「任せても問題ないと思えるかどうか」 によって左右されます。
ステークホルダーへの共有がもたらすもの
この不安を和らげるために重要なのが、チームの状況や判断を適切に共有することです。
- 何をやろうとしているのか
- なぜその判断に至ったのか
- 現在どのような状態にあるのか
これらが見えるようになると、チームの意思決定プロセスへの理解が進みます。
たとえば、スプリントレビューで成果物だけを見せるのではなく、「なぜこの優先順位にしたのか」や「どのような課題があったのか」を合わせて共有する。そうすることで、チームの考え方や判断基準が少しずつ伝わっていきます。説明の積み重ねが、信頼の積み重ねになります。
自分たちで決めることへの不安
一方で、チーム側にも不安はあります。
- 自分たちの判断が正しいのか分からない
- 責任が大きくなりすぎるのではないか
- 他のチームや組織と整合が取れなくなるのではないか
これらは自然な感覚であり、無理に排除する必要はありません。重要なのは、小さく試し、振り返りながら調整していくことです。
スクラムの前提は、最初から正しい判断をすることではなく、試行錯誤を通じて学び続けることです。不安は出発点として、むしろ正直なものだと思います。
どうすれば自分たちで動けるようになるか
自分たちで意思決定できる状態に近づくためには、次のような取り組みが有効ではないかと思います。
- 状況を見える形で共有する
- 判断の理由を説明する
- 結果を振り返り、次に活かす
これらを続けることで、周囲からの理解と信頼が少しずつ積み上がっていきます。自分たちで動けるようになるためには、まず自分たちの動きが見えている状態をつくることが先決かもしれません。
まとめ
チームに必要な権限とは、「自分たちで意思決定し、改善を進められる状態」を実現するためのものです。
それは誰かから与えられるものではなく、日々の活動の中で信頼を積み重ねることで、少しずつ広がっていくものではないでしょうか。
自分たちのチームは、その状態に近づいているでしょうか。
権限とは、求めるものではなく、積み上げるものかもしれません。

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